わたしたちの考え

原子力発電は、ウランなどの核物質から大きなエネルギーを得るかわりに、放射能が非常に強い「ゴミ」を残します。そのなかには1万年をはるかに超える時間にわたって人間に影響を与えるものも含まれているので、この「ゴミ」の後始末は原子力を利用する国々にとって大きな問題です。

科学の力でこの「ゴミ」の放射能を消すことは簡単でなく、とても実用的ではありません。そこで、この「ゴミ」を地下深くに埋めることで将来の世代からも隔離したことにしようというのが、国際的な原子力機関などの方針です。けれども、アメリカやフィンランドのように計画がいちばん進んでいる国ですら、処分地を決めたばかりで、本当に埋めるのはまだ先のことです。日本は、行き場のない「原発のゴミ」をこれまで原子力発電所や青森県、海外に置いてきましたが、地下に埋め捨てにすることを2000年に法律で決め、いま処分地探しを始めています。

いくら丈夫な容器に入れて埋めるといっても、長い時間がたてば放射性物質はいずれ漏れ出して地下水によって周囲に広がり、人間の生活環境にたどりつくかもしれません。地下深くでは放射性物質の動きが遅く、地上に達するのにかなり時間がかかる傾向にあるとはいえ、危険な「放射能のゴミ」を地下に埋め捨てるというのは無責任な話です。現在の科学や技術の力では、地下に埋めることによって遠い将来にまでわたる安全を確実に保証し、まったく心配がいらないと断言することはできません。地質に何か異変があっても地下深くでは手立てがしにくいということも不安をもたせます。

一方、監視がしやすく何かのときに手を打ちやすい地上付近でも、非常に長い時間にわたって放射性物質が漏れないようにしておくことは難しい話です。結局、この問題はどんな方法をとるにしても危険と心配はなくせないとわたしたちは考えています。

はっきりしていることは、そうした危険と心配が将来の世代に残ること、「原発のゴミ」は放射能が強いので50年ぐらいは待たないと埋めることもできないこと、このまま原子力発電を続けていけば処分場はすぐにいっぱいになり、また同じ問題に悩まされ続けることです。

ですから今は、この廃棄物の問題をどう考え、原子力発電を今後どれだけ利用していくのか、そしてエネルギーや資源をどのように消費する社会を目指すのか、地球の未来をよく考えた議論を多くの人のあいだですべきときです。

だからこそ、「地下深くに埋め捨てにすれば、まったく心配ない」と宣伝して処分地探しを急いで進めていくことに、わたしたちは反対します。原子力に関係する人たちも、この方法で放射性廃棄物を際限なく捨ててもいいとは考えていないことを、わたしたちは感じています。この点を正直に話し合うことは、単に原子力の推進派と反対派の綱引きの問題なのではなく、将来のために大変重要なことです。「地下に埋め捨てるしか方法がない」というのであれば、そのような原子力発電をどうするのか、今こそ社会全体で議論すべきなのです。

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